5月のatelier gallery
Gleichenia japonica Spr. 裏白 w420h587
陸上では水が乏しい。
水をいかに獲得し、保持し、効率的に利用するか、
それはすべての陸上生物が直面した重要な問題である。
4億4千年前のシルル紀。
地球上では海洋生物が爆発的な進化と繁栄をとげていた頃、
複雑な組織をもつ動植物の高度に発達した生態系が生まれようとしていました。
シルル紀から5千年のちのデヴォン紀になると、
水分の損失を制御するためにさまざまな適応をするようになります。
そして迎えた現在より遡ることおよそ3億5千年前の石炭紀。
陸生植物は構造的多様性や生物的複雑性にその進化を到達させ、
草本植物やつる性植物、シダ植物を代表とする木生植物が派生していきました。
大いなる繁栄を誇ったシダ植物はさまざまな進化を遂げながら、
徐々に木生から草生へと移行し、
白亜紀に誕生した被子植物によって、新しい生息地を得て多様化します。
突如襲った白亜紀末期の生物大量絶滅も及ぼした影響はわずかにとどまり、
古第三紀では現代のような森林が発達した結果、
シダ植物は、林冠の生育環境に合致した着生植物として、
現在まで旺盛にその姿を見せてくれています。
(参考文献:生物の進化大図鑑/河出書房新社)
高山に入るとき、そのアプローチでまず目にするのは、
笹などのヤブか、シダ植物ではないかと思います。
向こう見ずの冒険家は、死ぬことよりも生きることの方が、
楽で容易なことだと言っているのを聞いたことがありますが、
地球の歴史、生物の歩みという観点からすれば、
生き続けることがどれほど大変なことなのかは、周知の事実かと思います。
それにしても、シダ植物ほど生命の躍動に満ち、
未来への繁栄を示し続け、機能的造形美に満ちた生物があるでしょうか。
今月7日の日曜日からの5月のatelier galleryでは、
久しぶりに制作したシダ植物を展示いたします。
シダ植物は花のない植物ですが、
なんというか、花より華があるというか存在感が半端ありません。
制作するにはだいぶ根性を必要としますが、
庭先に毎年のように生えるイヌワラビを見ながら、
彼らが辿ってきた4億年の歳月の変遷に想いを馳せ、
新緑の季節の到来に胸躍らせるのです。
5月のateliergallery
「The Fern(シダ植物)」
2017年5月7日(日)〜9日(火)12:00〜18:00
special source atelier gallery
川崎市高津区久地4-11-46
044-813-0783