ご近所の教え

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年末のお披露目会での作品のテーマを考えるのに煮詰まってしまい、

 

ご近所をぶらぶらと散歩に出かけました。

 

しばらく歩いて、カトリック教会へ行こうと思って坂道を上る道中、

 

小学校の正門前で六年一組の又吉くんの言葉に感動して、しばらく立ちすくみました。

 

「又吉くん、ありがとう。大人になるとどんどん難しくなってしまうことなんだけれど、

 

おじさんも君たちを見習ってやってみるよ。。。」

 

そう心の中でつぶやいている自分がいました。

 

カトリック教会の中に入って腰掛けて、祭壇を見ながらボーッとしていると、

 

とても静かで西日が暖かくてウトウトしてしまいました。

 

日が沈んでしばらくいましたが、ずっと静かなままのカトリック教会を後にしました。

 

そして、帰りにもう一度小学校の前を通りました。

 

後ろ向きの白い人の頭にあるのは帽子なのか、三つ編みなのか、パン屋さんなのか、

 

お医者さんなのかなんて、どうでも良いことを考えてしまいました。

 

のどかなひととき過ぎて、何に煮詰まっていたのかも忘れてしまっていました。

 

又吉くんの言葉とカトリック教会のセット。頭と心のリセットには素晴しいセットでした。

 

皆さんも機会があったらどうぞお試しを。

 

 

 

 
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白の造形美

 

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植物採集をしていると、動物の骨に遭遇することがあります。

 

もちろん骨だけではなくて死骸、屍と呼ばれるものとの遭遇もあります。

 

さすがに後者は僕も収集を躊躇してしまいますが、動物の骨の専門家の義理の姉などは、

 

一切の迷いもなくポリ袋に屍を入れ、博物館にて大きな鍋で煮て肉や臓器を取り除き、

 

アルコールで洗浄した後、部位ごとにジップロックで密封して保管しています。

 

沖縄の公設市場で大きくて珍しい魚を頼んできれいに食べた後、

 

白いナプキンの上に丁寧に置いていた骨をジップロックに入れて持ち帰った時には、

 

ジップロックは常備品なんだと感心したことがありました。

 

お話が少々脱線してしまいましたが、僕は全身の骨格標本というものは、

 

やはり湯沢英治さんの写真集「BONES」のような表現を見る方が好きなので、

 

自分の感性的にはごく限られた部位だったり、それこそひとつの骨、

 

かけらなどに対して強く惹かれてしまいます。

 

自然が生み出した生物の様々な形態は、いつの時代でも僕たちに驚きと感動を与えてくれます。

 

リンネがいた18世紀の博物学探検の黎明期では、現在より多くの驚きと感動を与えていたことでしょう。

 

たとえ自らの命を代償としてでも、

 

その神慮に満ちた生物たちの美しさに触れたかった人たちがたくさんいたのも、

 

至極当然のことだったのだと思います。

 

植物も動物も皆朽ちていき、土に還ると跡形もなくそのまま地球の中へ消えていきます。

 

古代からずっと変わらない、そうなる前のほんのひとときの美しさに、

 

僕はただただ感心するばかりなのです。

 

 

 

 
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冒頭写真:野兎(桜流木)

 

下部写真:鹿(欅流木)

 

 

 

 

 

fairy of sea

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『around the sea』の海の精霊の行き先を尋ねられることが何度かありました。

 

良縁があって、あの子は鹿児島に行きました。

 

暖かい南に行くことになったのは、きっとあの子が望んだからだと思います。

 

そしてあの子の周りは、世界中から集められた石や銀貨、

 

色とりどりの小さなガラスたちに囲まれています。

 

珊瑚や海の住人たちといるように感じることが出来て、

 

きっとあの海の中にいるように、心を落ち着かせてくれていることでしょう。

 

送られてきた写真を見て、そう感じました。

 

鹿児島に訪れる機会がありましたら、是非会いに行ってみて下さい。

 

 

 

samulo:鹿児島市西千石町8-21

 

http://www.samulo.com/

 

 

 

 

 

 

work wagon

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それぞれのアトリエにそれぞれの作業ワゴンがありますが、

 

10数年前、大森にあった取引先の工場にあった作業ワゴンはとても薄汚くひねこびていましたが、

 

とても素敵なワゴンでした。

 

「フランス製のものをカスタムしたりしてこうなったんだ」、

 

「見た目はボロいが使い勝手はバツグンだよ」と細部までいろいろと見せてくれました。

 

2、3年前に高齢が理由で工場を閉められてしまったようですが、

 

数ヶ月前にあのワゴンはどうしちゃったんだろうとの追憶が頭から離れない時期があって、

 

写真のはその時制作した作業ワゴンです。
 

 

 

 
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全体を錆させてから表面の錆を落としてクリアワックスを塗布しています。

 

ウレタンやラッカークリアなどを塗ってしまうと、

 

後から錆が膨れ上がってきて塗膜が剥がれてしまいます。

 

色を塗ってあれば味になるんですが、クリアだとただ汚いだけで全部剥がしたくなりますが、

 

大変なので結局汚いまま使い続けなければいけません。

 

こういうものは自分でメンテナンスするものなので、

 

錆が気になってきたらサンドペーパーで落としてまたワックスをかけます。

 

それを気長にやっていけばどんどん味が出ていきます。
 

 

 

 
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抽き出しは上段の木の方はストックしておいた古いものを使っています。

 

下の鉄のものは取り出して作業台の上に置いて使ったりもしています。

 

すべて鉄で味が出ているアメリカ製のものもかっこいいですが、木が少し入るといいですね。

 

こういったワゴンを使う方は皆さん自作される方が多いと思いますが、

 

それぞれに使い込んだ味があって、どの工場にお邪魔させてもらっても、まず初めに探してしまうものですね。

 

 

 



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w1040 d440 h900 スチール錆仕上げにクリアワックス

 

 

 

 

 

 

マイナーは作るべからず?

 

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先日のカール・フォン・リンネのブログについて、友人から少々のツッコミがありました。

 

「リンネは海外では有名だけど、日本で真剣に植物学を学んでいる人たち以外にはほとんど知られていないから、

 

題材としては日本だし、牧野富太郎とかシーボルトとかが面白そうって思われるんじゃないの?

 

まあ、海外を視野に入れてるんなら別だけど。。。」

 

そうなんですねよ、確かに日本ではかなりマイナーなんですが、

 

アトリエギャラリーの最初ということもあって、最初に植物学の礎を築いた人というところに惹かれたんです。

 

牧野さんに関しては、いくつかの文献や著作を読みあさっているところです。

 

次の機会までに理解しておきたいと思っているお方です。

 

もうひとつの海外を視野に、というのは彼が言うには作家として展示会などを海外で、

 

ということなのですが、海外へ出向きたいのは変わっていませんが、

 

植物の世界にのめり込んでいくうちに、海外へは個展とかではなくて、純粋に植物を採集しにいきたいと思っています。

 

できれば海外の博物館の貴重な資料なんかも見れたら良いと思うので、

 

僕の金属の植物を気に入ってもらえたら、飾ってもらったり、

 

ついでに絶滅危惧種なんかを作らせてもらったりなんてことになったら楽しいだろうな〜と思っています。

 

なので、今回は植物の名前を分かりやすく分類して体系を確立したリンネに対してのリスペクトです。

 

彼は牧師一家に生まれて、神学的な思想が濃かったということも、

 

礼拝堂をイメージして作ったアトリエギャラリーの空間にも合うのかな、というところです。

 

作家として、作り手としてどうあるべきか、有名になるためにどうアプローチしていくのか、

 

作品を売るためにどうマーケティングをするべきかなどなど、

 

もの作り仲間の間では、いろいろと語られたり語ったりが多かったりするのでしょう。

 

僕も15年前までイデーというインテリアショップでデザイナーとして働いていた頃から、

 

そういったことを中心にやってきましたが、

 

そこでは僕の求める思想や哲学というものを見つけることができませんでした。

 

ですので、今の僕にはそれらは全く必要はなくはないのでしょうが、

 

とても優先順位の低いものになってきているように思います。

 

日々の暮らしの中で機会は少ないながらも、自然には造形の美しさだけでなく、

 

求めていた思想や哲学がありました。それらの恩恵をそのまま表現していくことができれば、

 

とても満たされるように思います。

 

 

 

 
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冒頭の写真の左はクロユリです。

 

学名はFritillaria camtschatcensis L. リンネが命名した花です。

 

右はヒトリシズカ、学名Chloranthus japonicus Sieb. シーボルトが名付けた花です。

 

そしてこの小さな濃い桃色の花はコマクサという高山植物です。

 

学名はDicentra peregrina Makino. 牧野富太郎さんの命名花です。

 

命名者の逸話などの背景を感じながら過去の作品を見ると、

 

また違った趣があるように見えるのはただの自己満足でしょうか。。。

 

 

 

 

 

 

森の珊瑚

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朝晩だいぶ涼しくなってきましたが、雑木林ではまだまだ蚊が元気です。

 

掃除のおねえさん方のような装備で森に入っている今日この頃です。

 

ヒガンバナの赤色が鮮烈に映える季節ですが、全体的に少しずつ色づいてきているように感じます。

 

ツユクサやキツリフネ、ソクズなどの夏の植物がまだ多く見られますが、

 

徐々にコスモス、キバナコスモスらが目立ちはじめています。

 

もうそろそろ、キク科の植物たちが主役になるのもそう遠くないようです。

 

僕は森に入るともっぱら地面の方ばかりを見回ってしまいます。

 

もう少し野鳥などの上の方にいる生き物たちをじっくり観察していたいのですが、

 

今のところは鳴き声だけでも聞ける時間があるだけで随分と癒されます。

 

そんな森の床には、たくさんのかけらが置いてあります。

 

特に台風が過ぎた今頃はいいですね、存分に満たしてくれますし、

 

掃除をしているみたいで、なんだか森自体が肯定的でいてくれるようで気分もいいです。

 

それにしても植物の描く曲線の美しさはいつ見ても素晴しいです。

 

ごく短い時間で作り出される人工的な曲線もきれいですが、

 

少しずつ少しずつの軌跡によって形成された自然の線というのは、本当に豊かですね。

 

おかげでアトリエにはたくさんのハチが絶え間なく行き交っています。

 

普通に作業していても、彼らは一度もこっちに威嚇しにきたりはしませんから、

 

もしかしたら巣作りの場所として選んでくれるのかもしれません。

 

 

 

 

 

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夏にもお伝えしていましたが、年末に開催予定でしたhikeさんでの『物質の循環展』は、

 

今年も見送りとさせていただきました。hikeさん、楽しみにされていた皆さん、本当に申し訳ありません。

 

アトリエギャラリーの準備、作品制作はなかなか進んではいませんが、

 

皆さまのおかげで絶え間なく仕事に励むことができるようになり、

 

こうして自然を観察する時間を大切にできるようになりました。

 

現時点で12月9日の週を目標としていますが、ファイナルアンサーはもう1ヶ月ほどお待ち下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

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