白の造形美
植物採集をしていると、動物の骨に遭遇することがあります。
もちろん骨だけではなくて死骸、屍と呼ばれるものとの遭遇もあります。
さすがに後者は僕も収集を躊躇してしまいますが、動物の骨の専門家の義理の姉などは、
一切の迷いもなくポリ袋に屍を入れ、博物館にて大きな鍋で煮て肉や臓器を取り除き、
アルコールで洗浄した後、部位ごとにジップロックで密封して保管しています。
沖縄の公設市場で大きくて珍しい魚を頼んできれいに食べた後、
白いナプキンの上に丁寧に置いていた骨をジップロックに入れて持ち帰った時には、
ジップロックは常備品なんだと感心したことがありました。
お話が少々脱線してしまいましたが、僕は全身の骨格標本というものは、
やはり湯沢英治さんの写真集「BONES」のような表現を見る方が好きなので、
自分の感性的にはごく限られた部位だったり、それこそひとつの骨、
かけらなどに対して強く惹かれてしまいます。
自然が生み出した生物の様々な形態は、いつの時代でも僕たちに驚きと感動を与えてくれます。
リンネがいた18世紀の博物学探検の黎明期では、現在より多くの驚きと感動を与えていたことでしょう。
たとえ自らの命を代償としてでも、
その神慮に満ちた生物たちの美しさに触れたかった人たちがたくさんいたのも、
至極当然のことだったのだと思います。
植物も動物も皆朽ちていき、土に還ると跡形もなくそのまま地球の中へ消えていきます。
古代からずっと変わらない、そうなる前のほんのひとときの美しさに、
僕はただただ感心するばかりなのです。
冒頭写真:野兎(桜流木)
下部写真:鹿(欅流木)