谷川の春は遅い
遅いとはいえ北アルプスよりは少々早いが
麓よりはずいぶんと遅い
豪雪がつくり出した険しい山なみを乗り越えてきた春と
新緑を引き連れて沢づたいに遡ってきた春がここに集う
谷川の春は多彩で賑やかでとても清々しい
カタクリ、ショウジョウバカマ、キスミレ、イワカガミ、イワウチワ、
チゴユリ、シラネアオイなどから
コブシ、タムシバ、シャクナゲ、ツツジそしてミズバショウまで
いろいろな植物が集まり語り合いとても美しい
谷川の春は静かで穏やかでとても心地がいい
隆々と雲が涌き上がる賑やかな夏と
色とりどりの紅葉とウェアで埋め尽くされる錦色の秋
そしてスキーヤーの描くシュプールが広がる冬と
途絶えることなく親しまれる谷川にあって
自分の歩幅で寄り道を重ねられるこの時期は
ゆっくりと春を眺め
しっかりと春を感じ
慌てずに季節の変化を想うことができる
カテゴリー:山
投稿日:2016年5月21日 0:01
材料待ちの祝日、山の天気予報は終日快晴。
連日の疲れが残っていたので、近くて手軽に登れる北八ヶ岳へ。
ロープウェイを下りると広がる雪原。
軽やかに進むスノーシュー。
人気の山ということもあって、
登山道は終始トレースがあり歩きやすい。
アイゼンに履き替えて、樹林帯を進む。
高度を上げていくと雪を冠った樹々たちが見える。
暖冬の今シーズン、雪は格段に少ない様子。
稜線に出ると遮るものは少ない。
2500Mに近づくにつれ風が強くなる。
山頂は混雑中。
昨年登った蓼科山が間近に見える山頂に到着。
360度の景観。
好天にご満悦のピークハンター。
ポージングも様になってきた。
左から南八ヶ岳、南アルプス、中央アルプス。
そして北アルプス、槍穂高連峰。
槍の穂先は雪が見えないほどの強風にさらされている。
太陽が雪に反射して眩しい。
西風が強くなり、早々と山頂を後にした。
水滴したたる霧氷。
風が作り出すさまざまな造形。
天候が荒れると生命への危険が迫ってくる雪山だが、
好天に恵まれれば快適な登山ができる。
生きものたちの胎動はまだ感じられないが、
季節は確実に春への準備を整えようとしていた。
カテゴリー:山
投稿日:2016年2月19日 14:25
季節は冬に入り、降雪も間近。
東京都の最高峰へ。
都内近郊、随一のロングコース。
長く続く樹林帯の勾配を、ひたすら登り続ける。
大きくそびえる富士山。
2,800Mからは白銀の世界のようだ。
樹林帯を抜けるとさらに勾配がキツくなるが、
眺望の良い稜線では、疲れていても脚は前へと進んでいく
山頂が近づくとガスが広がりはじめた。
そんな時でもピークハンターは笑顔を絶やさない。
こんな時の山頂での温かなカップラーメンは、
星のついた店のどんな料理よりもおいしくてありがたい。
下山を始めるとガスで夕陽が拡散して、
とても幻想的だった。
樹林帯に入り、予定下山時刻まであと2時間というところで、
上弦の月が昇り、夜の帳が下りた。
真っ暗な登山道を1時間で駆け下りた代償は大きかったが、
澄んだ空気と枯れ葉の香りを充分に堪能できた、初冬の奥多摩だった。
カテゴリー:山
投稿日:2015年12月11日 11:18
秋の北八ヶ岳。
静かな森へ。
錆色に輝く羊歯は、
朽ちてもなお力強く葉を広げていた。
森林限界を越えるとガスとともに冷たい風が、
荒々しい岩稜とともに立ちふさがる。
標高2,500Mを越えて、
この世のものとは思えない光景が広がり、ただ立ちすくむ。
そんな時でも笑顔のピークハンター。
山小屋の営業も終わりが近い。
結局今年の山行は2回。近年では最少に終わった。
アルプスはおろか山の中で1泊もできず、
身体の時間軸が自然と隔絶されていく。
昼食を終えるとガスが晴れていた。
空が近く、蒼が深い。
下山時に見るなだらかな山々は、
いつでも穏やかな気持ちにさせてくれる。
アルプスでは、季節はシーズンを終え雪山に入った。
頑張っても結局シーズンに行けないのなら、
厳冬期のアルプスに本気で挑んでみようか、
と思わずにはいられない、
消化不良の2015年の登山シーズンでした。
カテゴリー:山
投稿日:2015年11月12日 23:54
新緑の山へ。
眩いばかりの緑がそこかしこで輝いている。
空の青との鮮やかなコントラスト。
新鮮な空気に囲まれていることを実感しながら登山道を進む。
足下ではタチツボスミレが可憐な花を咲かせていた。
高度を上げていくと芽吹き始めた樹々たちが、
日差しへと目一杯の背伸びをしているようにみえる。
さらに高度を上げると樹々の間から富士山が見えてくる。
この季節にこれほどまでに雪がない富士山はあまり記憶がない。
ピークハンターはピークを探す。
この大菩薩嶺のピークは樹林帯にあり、
眺望がきかないピークのため、
ピークハンターは少々戸惑い気味。
それでも稜線からは南アルプスが連なっていた。
3,000Mの巨大な山の塊が連なる姿は、
こうして遠くから眺めてみても、やはり大きな壁のように見える。
午後からのゆるい登山のため日暮れはかなり早い。
気持ちの良さそうな稜線を足早に下りていく。
夕暮れ前の落ち着いた日差しの中でも、
緑はとても輝いていた。
生命が躍動する季節は、みんなが楽しそうで、
そしていつも忙しくて賑やかなようだ。
カテゴリー:山
投稿日:2015年5月15日 16:58
山上で霧が晴れると、月が欠けていた。
皆既月食の時だけ見られる赤銅色の月。
雲上の幕営地の風は身体を凍てつかせ、容赦なく体温を奪っていく。
月食とともに頭上に現れた星たちと赤い光を浴びて、
ほんの数分だけ、なんとなく温かな気持ちになって夜空を見上げていた。
カテゴリー:山
投稿日:2015年4月18日 11:34
大雪に見舞われた昨年の今頃は、
近場の低山でも登山口から雪が積もっていた。
今年は標高1,000Mくらいからが踏みごたえのある雪道になっている。
陽射しはまぶしくてあたたかい。
それでも山の春はまだまだ遠い。
カテゴリー:山
投稿日:2015年2月4日 9:48
穂高の頭上に満月が佇む夜明け前の静寂。
雲海の果ての輝きが色づき始める。
飲み残したコーヒーが目を離した隙に凍りつくほどの寒さの中、
じっと朝日を待つ。
空が明るくなってから日が出るまでの時間は、
途方もなく長く感じられた。
この暖かさに改めて太陽の恩恵を感じ、大地の神々しさに息をのむ。
山の朝は慌ただしく、
すぐに撤収してパッキングを済ませ、
今回の目的の頂き、常念岳を目指す。
いくつかのピークを越える稜線はアップダウンが激しく、
吹き付ける冷風と相まって、思うように進まない。
陽射しが凍りついた地面を照らし、解かしていくのを見ながら、
一歩一歩進んでいく。
高山では秋はすでに終わり、冬支度が足早に行なわれていた。
そんな樹林帯に誰よりも早くピークに辿り着きたい足早な人もいる。
最後の登りは見上げるのが嫌になるくらいに続いていた。
懸命に岩をよじ登り、ついにピークを眼前に捉える。
振り返れば美しい稜線。
視界に飛び込んでくる北アルプスの山々。
その先の稜線もまた見事なまでの美しさを放っている。
時間と体力の許しがあるならば、
このまま目の前の稜線を歩いて白馬まで行ってみたい。
田淵行男さんが生涯をかけて206回登頂された常念岳。
初めての登頂で与えていただいたこの天候に胸がいっぱいになった。
ピークに辿り着くのにあれだけの労力を費やしたからには、
下山も長く険しい道のりが待っている。
常念小屋がいつになっても大きく見えてこない。
膝が笑うを通り越して、膝がデスる。
明日の朝は生まれたての子鹿のように起きることになるのだろうか。
小屋を過ぎればすぐに樹林帯の中へ。
派手な色づきがない分、落ち着いたコントラストがファインダーを埋めてくれる。
沢まで辿り着けば、ゆるやかな勾配を進むことになる。
田淵さんが見た景色がそこかしこに広がる贅沢な空間。
次回はこの山だけで、ゆっくりと時間をかけて歩いてみたい。
10月も半ばを過ぎるとアルプスの山々は冠雪し、
4ヶ月間にわたる登山シーズンは幕を閉じる。
晩秋の薄暮に色づく沢づたいの登山道には人影もなく、
もうじき訪れる冬の到来に備えて、ひっそりと静まり返っていた。
カテゴリー:山
投稿日:2014年10月24日 13:53
シーズン終了間際。
北アルプスへ。
ほとばしる生命感を見せていた植物にもやってくる朽ちていく季節。
眩しい陽光が最後の輝きを与えてくれている。
山頂まで5時間。
重いザックを背負っての登りはかなりこたえる。
北アルプスは想像以上に急な登りが続いていくため、
カメラをザックにしまい、ひたすら登り続けて高度を上げていく。
樹林帯を抜けると雲の上に常念岳の姿。
田淵さんの愛したこの山には翌日に向かう。
蝶ヶ岳の山小屋がおぼろげながら見え始めると、
森林限界の稜線に辿り着き、
しばらくして見えてくるのはあの山の頂。
肩で息をしながら辿り着いた山頂に待っていた景色。
どこまでも高く深い青色の空と3,000Mの山々が連なるスカイラインに、
しばらく立ちすくみ言葉を失う。
秋の山の夕方は短く、
冬のような寒さの山頂へ、暖かな街から湧き上がってくる雲が覆い始める。
夕焼けに照らされる絶景を見る機会はまた次にお預けの様子。
次第に闇に包まれていくと、夜はガスの中に埋まる。
夕食を済ませると視界もないのでテントに入り、
風の音を聞きながら眠りがやってくるのを待った。
不慣れな野営では眠りは長く続かない。
外へ出るといつの間にか雲は北へ消えていた。
その北には北斗七星が輝き、槍ヶ岳山荘の明かりが見える。
まだ皆さん起きているようす。
西の空には天高く伸びゆく天の川と、
デネヴ、ベガ、アルタイルの夏の大三角形が山の向こうに沈んでゆく。
天頂に輝くのは秋の星座アンドロメダ。
凍てつく山頂で、近づいた宇宙との間に時間の変遷は感じられず、
いつまでもこの星々を眺め続けた。
カテゴリー:山
投稿日:2014年10月21日 9:00
気がつけば、いつの間にか8月もあとわずか。
夏が行ってしまう前に八ヶ岳へ。
いつものように静寂に包まれた苔のむす森。
夏の初めにたくさん咲いていた花たちは、すでに来年への準備に入っている様子。
そんな中、お気に入りのヤマハハコが見頃を迎えていた。
この花はとにかく可愛くて微笑ましい。
樹林帯の勾配がきつくなると稜線は近く、清々しい日差しが差し込む。
しらびその樹々たちの縞枯れが目立つようになれば、
そろそろ山頂が見える。
疲れた両脚を、容赦なく迎えてくれる岩の海。
明日から何日くらいロボットのような動きを強いられるのか。
山頂で待っていたのはもうひとつの山頂。
この天狗岳は西と東のふたつの頂がある。
山と山を結ぶ稜線。
峰と峰をつなぐ尾根。
その先には少し低い頂、さらに先には少し高い頂。
いくつも越えていかなければ辿り着けないと思わないで、
いくつもの稜線を歩いていけると思えるか。
なんだか勉強になる。
西から東へはゆっくり歩いても30分ほど。
森林限界を越えて、気軽に楽しめる稜線はなかなか少ない。
ピークハンターはご満悦。
夏の名残をわずかに醸す緑。
見上げれば、空には秋の気配。
暮れかかる山の向こうに北アルプスが見える。
間近では天気が悪くて姿を見せてくれないけれど、
離れるとこうして少しだけ見せてくれる。
気を惹くのが嫌なくらい上手い。
八ヶ岳は9月を待たずに秋に変わっていた。
これからしばらくすると樹々は色づきはじめ、
空は青く高い日が多くなり、一年で一番賑やかな季節を迎える。
その紅葉の季節と夏山の間の、なんて言っていいかよく分からないのが今の季節。
その分登山道は静かで、気に入った場所でのんびりすることができる。
僕のような人混みが苦手な人には、一番過ごしやすい山の季節なのかもしれない。
カテゴリー:山
投稿日:2014年8月30日 14:21