視界のない山旅
こんにちは。
9月を迎えました。
まだまだ暑くてどうしようもないくらいバテバテな日々が続きます。。
展示の際にたまに聞かれることのひとつに、
「一番好きな山」があります。
私はシンプルに花に会いに行きますので、
北アルプス白馬岳、北海道の大雪山のどちらかになるかと思いますが、
次に行くのなら迷わず大雪山かなといつも思っています。
しかしこの大雪山はなかなか相性が悪いのでしょうか、
未だに一度も山旅の道中にて、満足のいく晴天に恵まれたことがありません。
1回目は旭岳温泉からの入山で、白雲岳避難小屋にて幕営の予定でしたが、
悪天候のためロープウェイが運行していないという事態に見舞われてしまい、
翌日旭岳のみの登山となってしまいました。
雨中の行軍となり、大雪山の厳しさを肌で感じました。
2回目は層雲峡からの入山でしたが、
またしてもロープウェイが強風のため大幅に出発が遅れ、
黒岳石室まで到着するのがやっとの状態、
翌日も天候回復は見込めず、白雲岳への縦走を諦め下山しました。
アルプスや八ヶ岳でも同様のことは少なからずありますが、
直前に天候を見極めることができるため、
かなりの確率で晴天に恵まれます。
かたや、北海道となりますと、
車ではなく飛行機となりますので、事前に予約が必要になります。
大雪山で高山植物が開花している最盛期は、
6月最終週から7月第一週までのおよそ10日間しかないのに加えて、
近年では蝦夷梅雨と呼ばれる天候不順が重なることもあり、
決行を決意するには非常に難しい山旅となっています。。
水や食料を販売している山小屋が黒岳にしかなく、
バイオトイレも黒岳にしかありませんので、
それ以外では携帯トイレを携行して、下山まで持ち歩かなくてはなりません。
エキノコックス感染症やヒグマの危険性だけではなく、
真夏でも吹雪になるほど気象の変化が激しいこともあります。
大雪山では工程に合わせた水を携行する必要があり、
水の分を軽くするために、デジタル一眼カメラの併用を止め、
当初の2回は中判のフィルムカメラのみで入山しましたが、
悪天候では防水パックの肥やしにしかならず、
1.5kgの鉄のかたまりを背負っていただけとなりました。。。
荒天の2回の山旅は厳しいものでしたが、
植物観察に関しての成果はなかなかのものがありました。
未だ見ぬ種を求めて3回目は旭岳温泉から入山し、
デジタルカメラを併用するため幕営はせずに黒岳石室に泊まり、
白雲岳赤岳から旭岳に戻るロングルートの工程で向かいました。
やはり厳しいのか相性が悪いのか、
終始ガスに覆われ、温暖化の影響なのか、
チングルマも綿毛に変わり始めてしまっていました。。
10時間を超える長い工程の最後に、
一番キツい登りを持ってきたのは大失敗と思ったのも束の間、
濃いガスが消え、ついに青空のもと大雪山最高峰の旭岳山頂に辿り着きました。(涙)
高山植物を含めた山麓からの種の豊富さは、
北アルプスの白馬岳に軍配が上がるのかもしれませんが、
高山植物の種類や希少種の豊富さ、
お花畑の圧倒的な規模の大きさスケール感では、
大雪山ほど学ぶことの多い山はありません。
詩人大町桂月の有名な一節、
「富士山に登って山の高さを知れ、大雪山に登って山の広さを知れ」
残念ながらとにかくいずれの工程も視界がなく、
大雪山の広さは微塵も感じられませんでしたが、、、、
次回こそはと、思いを馳せるここ数年です。