田淵行男
十数年前、ビンテージ家具を扱うhikeさんに置いてあった田淵行男さんの本。
「山の意匠」。
ゆっくりページをめくっていくと、
自分の前に新しい世界が開かれてくるのを強く感じました。
静かに湧き上がる感動が全身を包み込み、
人生を大きく変える一冊の本と出会うという、
生涯忘れられない貴重な体験となりました。
そのまますぐに神田の古書街へ向かい、
その「山の意匠」と、「山の季節」「安曇野」「浅間八ヶ岳」を手に入れました。
僕もお弟子さんの水越武さんと同じで、
山や植物や蝶の美しい写真ではなく、
田淵行男さんのストイックな姿勢に強くひかれました。
生命への親愛の思いが溢れていて、
写真集というよりは、確かに博物誌のように感じました。
水越さんが「山の季節」で、
『先生は山の自然をリアルに直視して、
それらをストレートに記録する作業をしていた』と述べられていました。
僕はこれにならって山に入り、目にしたものを作るようになりました。
その後数年をかけて「日本アルプス」「尾根路」「黄色いテント」「山の手帖」、
そして「高山蝶」などほとんどの著書を入手し、残るすべてを今でも探し続けています。
先日日曜美術館という番組で、田淵行男さんが取り上げられていました。
ご覧になった方も多いかもしれません。
田淵さんの本を初めて手に取ったあの時を思い出しながら、
改めて生涯の師となった田淵さんの本を読み直す毎日ですが、
まだまだまだ自然への愛が足らないなぁと思う今日この頃です。