月山と深山薄雪草
峻険な岩場はなく、どこまでもたおやかな稜線がつづく月山。
耳をすませば、どこからともなく山伏のホラ貝が聞こえてくる。
みずみずしい高山植物たちは、東北の短い夏を謳歌していた。
広い山頂に辿り着くと月山神社に参拝し、
ガスが登ってきた山頂を後にしようとした。
池塘を過ぎた辺りで深山薄雪草を見つけた。
この小さくて清楚な花は、東北地方の高山帯にしか咲かない。
僕はガスに包まれた山頂で、風に揺られながらひっそりと、
身をかがめるように支え合う姿をスケッチに納めた。
下山してリフトを下りると老夫婦が見えた。
月山の夏の一日が静かに過ぎていった。
和名:深山薄雪草
学名:Leontopodium fauriei Hand.-Mazz.
「記録集」発売会 出展作品
山形県の中央部にある月山は、湯殿山と羽黒山と合わせて出羽三山のひとつで、
今でも数多くの修験者が登る山岳信仰の山です。
僕らは姥沢からリフトに乗り、姥ヶ岳から牛首を通って山頂に向かいました。
森岡さんは山形県のご出身ということで、
小さい頃は多くの子供たちと同じように、度々登らされていたそうです。
なだらかな山容とほのぼのとした空気感は、
なんとなく誰かと似ているなと思いながら登っていました。