聖カタリナ
幻視の中で天国に運ばれ、聖母の導きによってイエスと婚約したとされる聖カタリナ。
多くの聖人たちと同じように、若くして非業の死を遂げ、殉教しました。
数えきれないほどの伝説が語り継がれる中で、
カタリナは歴史家たちにその実在を否定され、理想化された偶像だったとみなされていました。
彼女が本当にイエスの妻になったのかは証明されていませんが、
像を彫り終えてみて、確かにすべてにおいてふさわしい女性であったと思えます。
先入観がなるべく入らないように、彼女の容姿が描かれた宗教画や言い伝えなどは、
ほとんど目に入れないようにしていました。
目の詰まった濃桃色をした桜の樹を前にして、
ただ趣くままにノミを入れました。
すべての不正や不公平さを赦す心の優しさと慈愛に満ち、
凛とした眼差しで未来を見つめる光への揺るぎなく深い信仰。
僕には到底備わっていない、強く、気高い姿に惹かれ、
今回、この聖カタリナをはじめとする聖人を彫りました。
「光の祈り」にて、そんな彼女たちの思いに触れてもらえることができたのであれば、
作り手としてこれ以上の喜びはありません。
St. Catherina de Alexandria
AC287 – 305
2014年の締めくくりとなりました「光の祈り」。
年末のお忙しい中お越しいただきましてどうもありがとうございました。
今回の彫像作品はすべて迎え入れていただくことになりました。
たくさんの方にご来場していただくような展覧会ではありませんが、
ご来場していただいた方々が、時間をかけて彫像たちを見つめているのをみて、
良い展覧会だったなと思っていました。
どうもありがとうございました。
2015年も皆さまにとって、優しさと慈愛に満ちた一年でありますように。